Sinbun-do 店主  長田 陽子

とある熊本人

熊本市中央区にある1軒の建物。

交流カフェ「Sinbun-do」。

本が沢山ある店内に暖かな陽射しが差し込みます。

ここは【交流カフェ】と名前についている通り、普通のカフェではなく交流ができるカフェとして2024年9月にオープン。

このカフェを作りたいという想いに至った経緯やSinbun-doでは何ができるのか、店主である長田陽子さんにお話を伺うことができました。

sinbun-doはどういった場所ですか?

「ここは気軽に訪れてもらって、ワンドリンクオーダーしていただければ本を読みながらゆっくりお茶したり人と会話ができる場所です。私たちスタッフとも話をすることもできます。余裕があればですが(笑) 最近はデジタル社会で子どもから大人まで人と対面する機会が減っていると思うので、そういう機会を取り戻したいという気持ちが私は強かったんです。生きていくうえで一番必要なところだと思っています。」

(↓カフェはドリンクワンオーダー制で本も読み放題。時期によりドリンクやスイーツは変更になる可能性があります。)

新型コロナの件もありましたもんね。

「そうなんですよ。その時お子さんとか成長期だった場合だと、対面での交流を知らないがゆえにコミュニケーションが心配な子たちもいると思います。」

私も現在未就学児を子育てしていますが、コロナ禍での子育ては大変だったと思います。

家族以外の人や子どもたち同士も話ができない。

外にもなかなか行けない状況でしたよね。

「本当ですよ。保育園とかだいぶ苦労したみたいです。通常なら群れて遊んで成長する場所なのに、他の子と関わっちゃいけない触っちゃいけない。本当に大変な数年でした。」

人との交流を取り戻す。

それがsinbun-doの根底にあるんですね。

sinbun-doを始めようと思ったのはいつ頃からなんですか?

「ここ数年です。具体的な案はあと後できたもので、お茶してゆっくりだけじゃなくて本も置いたら交流や学びにもなると思いました。例えば悩んでいることが発達障害とかなら、ふと本棚にある発達障害に関連する本をとってもらって、そこからヒントが得られるとか、人との交流にヒントがあるかもしれない。2階はレンタルスペースなんですが、レンタルスペースがあればいろんなことができるよねっていう気持ちがありました。」

それは長田さんがいろんなことがしたいと思ったということですか?

「私自身が『熊本市子ども劇場(外部リンク)』に家族で10年くらい入会してて、そこで子ども育ててもらったと思っている部分があるもんですから。親子で一緒に観劇したり、音楽を聴いたり、野外活動で野外キャンプをしたり、焼き芋やそうめん流しなんかも。子どもと一緒に企画してするっていうことを経験していたもんだから、いろんなことに使える場所をどうせなら併設したいと思って2階は多目的スペースにしました。個室3つなんですけどパーテーション広げたら長く広く使えるようになっています。子育て中の自分の経験から作りました。」

(↑2階には多目的のレンタルスペースの他、↓コワーキングスペースや2階を利用する方が使えるミニキッチンも併設。)

長田さんは長い間専業主婦をされていたんですよね?

「子ども劇場に通っていたころ12年間は専業主婦でした。義理の父が「有限会社 長田進文堂」ってスポーツ新聞を卸販売する会社をやっていたんです。昭和44年に創業して一代で築いた義父が亡くなって、夫は他に勤めていて定年も近いため2017年に私が継いだんです。専業主婦で義父の入院中の世話をしながら義父の会社なんかも行き来して、会社の人達とも顔なじみになって仕事の手伝いなんかもして流れもちょっとはわかっていましたし。義父はもともと自分の代で業務を終了するつもりだったみたい。でも病気をして亡くなってしまいました。その後私が引き継ぎましたが…3年余りで業務や従業員を別会社へ譲渡する運びとなりました。」

業務や従業員の方の今後も考えての譲渡だったのですね。

長年専業主婦だったのにそこまでスムーズにできるのがすごいです!

「45歳でしたね、引き継いだのが。なんとなく『私かな~』っていう予感はしていたんです。やってみようかなって。義父がかっこよかったんですよ!『俺には責任がある』とか病室でも言ってて。その意思を亡くなったからといって投げ捨てるわけにもいかず、長年やってきてるからそのレールに乗ればなんとかなるかと思って引き継ぎました。」

すごく努力をされたんじゃないですか?

「だいぶ泣きましたね。まだ子どもが小2と小5でしたから。」

小学生のお子さん2人…。

それは大変だったと思います。

そこからShinbun-doを作ることになるわけですね。

「2020年の3月に業務を手放して、ちょうどコロナ禍になって。こんなに人と会わないってきついんだと思いました。どこも場所は借りれないし、普通に友達とお茶しに行くのもはばかれるような世の中。どうしたらいいんだろうって思っていて…自分で場所を作れたらなぁって思いが強くなりました。『食』が一番人と人を結びつけるなって思ったんですが、ランチ営業とかまで自分たちでするとなると食事を作るほうに労力をさいてしまいます。時間もかかる。それだと最初の目的と変わってしまう。なので使ってくれる方がいたらと思ってレンタルスペースをすることにしました。」

自分たちだけではなく誰かが新たな出会いや交流ができる場所を作ったんですね。

お部屋もキッチンも素敵ですもんね。

問い合わせは多いですか?

「問い合わせは多いです。レンタルキッチンよりレンタルスペースの問い合わせが多いですね。キッチンはお菓子とか販売目的の人だと資格などが必要となる場合もあるので。」

(↓1階のレンタルキッチン。充実した設備に調理器具も完備!)

(1階にはカフェやレンタルキッチンの他、小さな個室もあり1日借りることもできる。)

義理のお父さんの業務を引き継いだことといい、人と人が交流できる場所を作ったことといい有言実行で凄いですね。

小さい頃からしっかりしたお子さんだったんですか?

「全然(笑)妄想にふける子でした。絵を描くのも好きで。4歳で急性腎炎になって2か月入院したんですが、その後も家の中で1か月、庭までで1か月、外出制限や食事制限もあって…その体験があるからか、考えたり物思いにふける子でした。でも末っ子だからか天真爛漫でマイペース。反発もしないし。親は元気でいてくれればって思っていたみたいです。心配性でしたよ。何になりたいっていうのはなくて『私って結婚するのかなぁ』とは考えていました。あとは、深刻な感じの雰囲気が嫌いなのでわざと茶化すようなムードメーカー的なことをしていましたね。」

妄想家だけど天真爛漫で人を楽しませるムードメーカー。

もともと楽しいことを考えたり、人と接するのが好きなんですね。

元の性格がこの場所を作ったんでしょうか。

「ここを始めたのは自分のためでもあるの。でも人と人との懸け橋になれた時はすごく嬉しいです。ここを作って、新たな出会いがあって、この人とあの人を会わせてみたら良いんじゃないかなと思うことがあります。」

(↓Shinbun-doには人や地域の繋がりが書かれた本や、親子のことが書かれた本がたくさん。)

縁って大事ですよね。

でも自分も行動しないと出会わない。

ここに来たら多分誰かいるから、どこかと繋がれるって思える場所があると最初の一歩が出やすいですよね。

いろんな人にsinbun-doを知ってほしいです。

「いろんな人にですね。大多数の方ばかりじゃなくて、自分も病気をした経験があるからマイノリティ側の人を置き去りにできないというか。そういう感じもあるのかな。あっ、あと…子どもの時の病気が今やってることにつながっているって言ったけど、私22歳の時に父親を癌で亡くしているんです。その経験も大きいかな。当時は告知する時代じゃなくて、父は癌だと言ったら落ち込むような人だから。その時に優しくできなかった自分が嫌だった。病名を隠してるわけだから。その経験もあって辛い思いをしている人のことが気になって仕方ないんです。」

行政とか公的な場所だと大多数の困ったことが優先されるからマイノリティ側は対応できなかったりしますよね。

それぞれ違った大変さもあって、長田さんは自身の経験もあってそういった人たちにも寄り添いたいと思っているんですね。

「主婦の時の経験でも、孤独を抱えてしまっている人がいるんじゃないかと思います。今レンタルスペースを借りていただいている方にも赤ちゃんを抱えてお仕事をする方や、赤ちゃんや子どものイベントをする方に借りていただくこともあります。とても嬉しいことです。」

(↓赤ちゃん連れや小さい子がいても対応できるように授乳室や子ども椅子もある。)

9月にオープンされて現在までどうですか?

「毎日違う方が場所を借りてくれたりカフェに来てくれたり…毎日が面白いです!ここで人と人とが出会ってくれたり。何度も利用してくれている方はこちらも他の方に繋いだりできるし。レンタルスペースは場所の大きさも変えることができるので、いろんな方がいろんな用途で使っていただいています。」

今後もっといろんな方に使っていただけそうですね。

「そうですね。今後やってみたいこともあって、『飲食店のオーナーの会』みたいなのもやってみたいです。一人で飲食店をやっている人がすごく多い。その人は食材の仕入れやお金のこと、仕込み、料理、お客さん対応、バイトがいたらその給与計算、全部1人ですごく大変。そういう方が多いんで同業者で悩み相談とか情報交換ができればいいなって。バイトさんには弱音はけないし。なので声をかけてやってみたいかなって。」

いいですね。

最近はキッチンカーをされる方も多いですし。

「あとは小中学生向けに『ボードゲームの会』とかも楽しそう。季節の行事は小さくてもやっていきたいな。近所の子ども会とも一緒にしているんですよ。」

まだまだやってみたいことがたくさんあるんですね。

「全部自分だけでやろうとは思っていなくて。専門家やみんなでやろうと思っています。」

「玄関前にスロープ、1階に多目的トイレもあるので、車椅子の方にもカフェをご利用いただけます。」

(↓建物の前と横に広い駐車場もあるため、大勢の方が利用できます。)

根っから優しいんですね。

人が大好きだから人に優しくできる。

ここは暖かい場所ですね。

コレだけは言っておきたいっていうことはないですか?

「場所がわかりずらいと言われるのでもう少しわかりやすくしようと思っています。のぼりとか立ててもっと店らしくしようと思います!最後に言いたいことがのぼりって…(笑)」

天真爛漫な長田さんらしい最後の言葉ですね(笑)

今日はありがとうございました!

「ありがとうございました!」

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