こどもとおもちゃのフラットソース  橋本 小百合さん

とある熊本人

菊池郡大津町にある平屋の建物。

入り口にとても可愛らしい看板があります。

ここは令和4年9月にオープンした「こどもとおもちゃのフラットソース」。

建物内に一歩足を踏み入れると、たくさんの木のおもちゃと和かなスタッフさんが迎えてくれます。

床もヒノキが使われており、木の肌触りや匂いからも柔らかな心地にさせてくれる場所です。

今回、この施設の代表である橋本さんにお話を伺うことができました。

(写真向かって右:代表の橋本小百合さん、左:スタッフの甲斐佳子さん)

こどもとおもちゃのフラットソース」はどういった場所ですか?

「沢山の木のおもちゃやグッドトイで遊べる場所です。わかりやすく一言で言うと『木のおもちゃを介してコミュニケーションの仕方を学ぶ場所』っていう感じです。私たち(保育士・おもちゃコンサルタント)が遊びやコミュニケーションのコツをお伝えします。赤ちゃんの発達や興味に合わせた遊びの提案、親も一緒になって楽しんだり遊んだりすることで子どもをフラットな視点で見ることができる場所です。」

私最初は木のおもちゃが遊べて、販売もしている場所なのかと思っていました。すみません。

「いえ、スタッフの求人を出した時、スタッフもそう思ったそうです😅ここのスタッフも保育士や療育、海外に住んでいたりといろいろ経験している方。私の熱い想いが書いてある求人票を見てピンっときてくださったんです。」

実際に後でスタッフの甲斐さんから話を聞いたらそう思ったらしいです。「求人票の想いのこもった文を見て働きたいと思った。」と言われていました。

おもちゃを通じて子どもをフラットな視点で見ることができる場所だから「フラットソース」なんですね。

【木】のおもちゃでないとダメなんですか?

「そういうわけではありませんが、木の良さはあります。熱伝導率が低く触ってもヒヤッとしなかったり、木育、自然や物を大事にということにも繋がります。子どもが遊ぶと木がいろんなものに変身します。想像力も育むんです。それを見て『その遊び方良いね!』って。子どもから学ぶこともあります。『〜しなければならない』『こうした方がいい』をとっぱらってもらいたいです。それに木はメンテナンスすると代々長く遊べるし、お母さんたちも木でホッとしたりもあります。木って触ってるだけで癒されるじゃないですか。」

確かに!木って触るだけでとても落ち着きます!

どうしてこの場所を作ろうと思ったんですか?

「私は初め幼稚園や保育園、児童館などで働いていたんです。でも考え方が違うと辞めてしまっていました。ある時、辛そうにしているお母さんがいて声をかけようとしたら職場の人から『そこまで立ち入らなくていいよ。』って言われたんです。【施設】ではなく多分【その人】はそういう考えだったんだと思います。でも私は『ここまでしかできないのか!』と思ったんです。保育園でも辛そうなお母さんがいても声かける暇がなかったり、ちゃんと子ども達を見ることができているか悩んだり、幼稚園でも行事に追われてしまったり…それぞれしたいことがあるけど出来ないことが多いなぁと思っていました。」

保育園も幼稚園も先生たちは忙しいですもんね。

「はい。他にもベビーマッサージやアロマの資格をとって自宅で教えたりもしていました。自分で考えて行動することが好きだったんです。自分の子どもも近くで見れるし。でも資料作りが大変で。子どもが寝静まった後に作業して、夫が夜10時くらいに帰ってくると中断しなければならない。『いいところだったのに…』って。夫がいるからこそ私はこういう働き方ができるのに…。なんだか夫婦仲がギスギスしてしまって、このままじゃ夫婦がダメになる。仕事にならないし、働きに出ようかとかいろいろ考えました。」

保育園などから離れても子どもと接する仕事はしていたのですね。ただ他の働き方をすると夫婦仲に影響が出てしまう…。

その後どうなったんですか?

「2人目妊娠中に【おもちゃインストラクター】の資格をとったんです。子どもが2人いると好きなことができなくなるだろうと思って。そうしたら2人目出産して6ヶ月後に熊本地震が起きました。幼稚園も休みになって、児童館もしなくなって、余震でみんな不安で…。インストラクターの上の資格で【おもちゃコンサルタント】という資格があるんですが、この資格をとるとおもちゃを無料で借りれて場所代だけで「おもちゃの広場」というものが開けるんです。私は子どもたちが不安になる『今』おもちゃの広場が開きたい!と思ったんです。でも資格を持っていない。その時、facebookで財団の方が『おもちゃを支援してもらったので熊本で誰かおもちゃの広場を開きませんか?』と言っていました。すぐに『私やります‼︎』って言って連絡をとったら実は偶然ご近所の方だったんです。そしておもちゃを借りて3歳の子と6ヶ月の子を連れて公民館で月に1回おもちゃの広場を開いていました。」

それがここの原点なんですね。
…あれ、でも仕事ではないですよね?

「原点ですが仕事ではないです。ボランティア。仕事はベビマ教室をしていましたが息子がよく動くようになって…その時グランモッコ(おんぶ紐メーカー)に出会ったんです。おんぶしながら講座も開けると思ってグランモッコのアンバサダーをしました。そしてSNSで『週3くらいで働きたいな』と呟いたらグランモッコの方が見て『うちで働かない?』って言ってくれたんです。そこでグランモッコのスタッフとして働き始めました。ここの会社の方が良い方で、プライベートのトラブルにも仕事時間など配慮してくれて凄く良くしてくれました。スタッフで働いているうちは、おもちゃの広場はグランモッコをメインにして時に出展したりしていたんです。」

子どもとも接する仕事ですし、いい仕事との出会いだったのですね。
そこからなぜ起業することにしたのですか?

「私やっぱり自分でしたい人なんですよね(笑)ちょうどプライベートのことでもっと自由に動く時間が必要になって…あと自分の子どもたちに自分が働く姿を近くで見せたいと考えたんです。起業は以前も考えましたが、私事務系が苦手で…一度諦めました。でも今回は決意したんです!おもちゃコンサルタントの資格もとって。そして私の親が以前経営していた縫製工場の跡地を何か事業に使わないかと父親が私たち姉妹に打診していたんです。最初保育園はどうかと言われたけど、私はあまり魅力を感じなくて。保育園は私じゃなくてもできるなって思って。私じゃないと出来ないことをしたいと思いました。」

自分じゃないとできないことですか…。
それは何をしたいというはっきりとしたビジョンがあったんですか?

「いえ、初めは自分でも何がしたいのか分からずモヤモヤしたりもしました。でも、例えば支援センターでおもちゃが引き出しで見えないようになっていたり、常連のお母さんと先生がずっと話をしていて初めて来たお母さんがその輪の中に入りたいわけではないけど居心地悪くて行かなくなってしまったっていう話を聞いたり……『これって子育て支援じゃないんじゃない?』って思うことがあって。じゃあ自分が思う子育て支援をしようと思いました。」

どういったものですか?

「おもちゃコンサルタントの講座の中で『子どもはスモールステップ』とありました。親から見たら全然成長していないように見えるけど、ちょっとずつちょっとずつ後戻りしながらも子どもは登っているんです。遊びながら【できた】を経験するし、自信をつけることができる。大人は子どもにおもちゃで『遊ばせよう』とするけど、それじゃ子どもは親の圧を感じて遊ばない。純粋に子どもと同じ目線で親もおもちゃを一緒に楽しむ事で子どももわかってくれると伝えたいです。そんなことができる場所を作りたいと思いました。ですが問題もあって…。父の縫製工場跡地という場所はあっても建物を作る資金がなかったんです。なのでクラウドファンディングをしました。」

これまでの経緯もそうですが、すごい行動力ですね。

自分が死ぬまでに何かやろうと思ったんです。クラファンのために300人くらいメールも打ってお願いをして。腱鞘炎にもなりました(笑)今まで何もしたことがない人がただクラファンをしても人は集まりません。繋がりを大事にしていると協力してくれる人がいます。まず、クラファンの担当の方が娘の繋がりなのですが、何度も会って私の内面を見てくれて内容を上手くまとめてくださいました。保育園の時の生徒や保護者もクラファンに参加してくれたり、熊本商業高校の生徒が授業も兼ねて応援してくれたり、最終的にネクストゴールの120万まで集まったんです。いろんな縁が繋がってここが出来ました。」

沢山の人の力を借りて「子どもとおもちゃのフラットソース」が出来たのですね。
今後についても聞かせてください。

「本当は育休中のママや保育士さんなどを対象とした養成講座もしたいです。ここの要素を詰め込んで子育ての仕方とかの講座。育休明けの仕事復帰の前に学んでもらったり、保育士さんも保育園に学んだことを持ち帰ってもらうことで違う観点から良い保育ができると思います。保育士さん向けには『働き方について話そう』っていうイベントもやったことあります。保育園が向いている人もいるし、私のように自営が向いている人もいる。どちらがいいとかではなく、いろんな働き方ができる。なかなか日々に追われて養成講座までは辿り着きませんが…。子育て支援センターが合わなかったり、木のおもちゃが好きだったり、育児やママ友関係など個人的な悩みや困りごとにも対応できる場所。保育士さんの悩みなども聞くことがあります。」

そういえば保育士さんの相談先ってなさそうですもんね。

「そう。同じ園の人ばかり集まってどんどん世界が狭くなってしまう。どうしても同じ園の人で集まるとグチっぽくなるけど、グチって終わるのはもったいない。違う人と会うことで違う保育感を知ることができます。」

ここで何か気がついたら保育に活かされて、最終的に子どものためにもなりますもんね。。

「同じ場所で同じことの繰り返しだと疑問に思っても中には目を瞑ってしまう保育士さんもいます。そうじゃないっていうことに気づいてもらえたらいいです。ここの場所は貸切で保育園が来ることもあります。園長先生の悩みを聞いたりもしますよ。私もいろんな保育園の人と関わることでその保育園の特色を知ることができます。保育園選びの講座もしました。どの園を推すとかではなく、ママたちが園に何を求めているか、どんなところを大事にしているかを聞いて見学の仕方のポイントを伝えるんです。」

誰でも「フラット」でいれる場所なんですね。

「そうですね。いろんな方の『ちょっと気になる』が聞ける場所でありたいです。例えばここに来るお母さんたちは子どもの発達が気になる方も多い。専門家に相談する前に『ちょっと聞いてくださいよ!』ってくらいの感覚で来れる場所があるといいと思いませんか?ここから専門家に繋げるようにしたい。ここの他にも隣の建物で週に2回不登校の子どもの居場所づくりもしています。あとはここを使わない時はレンタルスペースとして貸し出したり。建物も設備もなんにでも対応できるようにしました。」

たくさんしたいことや夢がありますね。
とても素敵な場所です!

最後に何か伝えたいことはありますか?

「まず沢山の人にここがどういう場所か知ってほしいです。そして必要な人に届けば良いなと思います。」

そうですね!こういった場所があることを知ってもらいたいです。
本日はありがとうございました。

「ありがとうございました😊」

施設情報

  • 対象:未就園のお子様と保護者
  • 開館日:祝日除く火・木・金、月2回土日(専用フォームより予約制)
  • 時間:2時間(10〜12時/13時半〜15時半)
  • 料金:大人1000円、子ども500円(6ヶ月未満のお子様は無料)
  • 定員:各10組
  • 所在地:熊本県菊池郡大津町引水140

こどもとおもちゃのフラットソース Instagram

こどもとおもちゃのフラットソース ホームページ

とある熊本人 他の人はこちら

菊池地域 その他の情報はこちら

他の地域はこちら

コメント

タイトルとURLをコピーしました